アマノケイのまったり技術解説

合成音声系の技術的なことを中心に解説記事を書いていきます。

Arpasingの録り方、使い方、リストの作り方+α

目次

・Arpasingの収録~自動原音設定
・Arpasing音源の使い方
・重複エイリアスの削除
・VCCV用UST→Arpasing用USTへの変換
・その他のArpasing用録音リスト
・Cz式VCCVの原音設定
・その他の英語リスト原音設定+リストの作り方

 

・Arpasingの収録~自動原音設定

 ①必要なものを揃えよう

HuaさんのウェブサイトのArpasingセットがあるのでまずダウンロードしましょう。

Hereと書かれた部分をクリックすれば各種ファイルがダウンロードできます。

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Arpasing Standard+Script+Plugin Update – Kanru Hua's Website

 

※リンク切れに付きこちらからDLできます↓

 

 

 ②発音の仕方を覚えよう

ArpasingにはIPA(国際音声記号)やX-SAMPA(拡張SAM音声記号)とはまた違った音素表記「Arpabet」が使われています。

具体例や詳細はリストの書かれたPDFに各種音素の発音例が記載されていますので、それを参考にしてください。

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デルタ式CVVCやCz式VCCVの音素表記に慣れている場合はこちらの音素対応表が参考になるかもしれません。

https://arpasing.neocities.org/jp/resources/phoneme-chart.html

 

分かりづらい場合、既存のArpasing音源を聴きながら収録するのも1つの手です。
※なるべくArpasing0.2の音源にしましょう。0.2は0.1に比べて約100行多いです。

全て検証した訳ではないですが、この中ではGekimaru_ARP,Kayaka Konagi Arpasing(茅歌コナギ)などが0.2です。

https://arpasing.neocities.org/jp/directories/voicebanks.html

 ③収録しよう

 まず、ここからリストをダウンロードしてください。

OREMO用Arpasingリスト - BowlRoll

 

収録テンポは150BPMが良いらしいですが、この速さだと結構音の長さが短くなり、母音伸縮の品質が下がるので、別途で長めの母音を収録したほうがいいと思われます。

英語の発音が苦手で、どうしても上手くいかない場合には110BPM辺りでもいいと思います。(個人的な意見ですが)

 0~9.wav:母音連続音

10~319.wav:造語含む単語3連を繋げて読む

320~334.wav:「a あ」のような同種の母音連続音

 ④原音設定をしよう

収録した計335個のwavファイルが入っているフォルダにArpasing toolkit内のindex.csvを入れてください。

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あとは音源の入ったフォルダをmoresamplerにD&D(ドラッグ&ドロップ)した後に

Please select the input format→3

Rename entries with duplicated name? →(重複エイリアスに番号を振るか振らないか)

Enter a suffix to be~ →多音階や表情音源にしないなら空白にしておく(#などの特殊文字は使えない)

を選択すれば原音設定されます。

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・Arpasing音源の使い方

 ①SynthVを併用する場合(一番楽)

VSQxやUSTを用意し、以下のようにSynthVで自然になるように歌詞を入力します

※「+」はSynthVで音節を区切るための記号です

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次にノート全体を選択し、右クリックメニューから「音素表記へ変換」を適応します。

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するとノートの歌詞がArpabetに変換されます

※音節区切り用の「+」は自動的に変換されないので自力でコピペして分けて下さい

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データの整備が終わったらUSTに書き出します

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UTAUで書き出したUSTを読み込みます(此処から先は最強プラグインでの作業推奨)

↓このアップローダーのiroiro2.zip

いろいろ | uploader.jp

 

下準備として、「文字数消すやつ」で「.」(コンマ)を除去します

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そして、「文字置換」の「一括置換」から、Arpasingに標準実装されてない音素を置換します

・dx→t(d)

・ax→ah

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最後に、ノートの一番最後の部分に休符を作成し、一番最後の休符を選ばない用にノートを選択した後「Arpasing Assistant」を適応するとArpasing用にノートを分割してくれます。

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Arpasing Assistantは「最適な異音を自動で選択してくれる仕組み」があります。

 

1※多音階Arpasing音源ではArpasing Assistantは使用できませんので、一時的に他の音階を隔離して単音階音源するか、単音階Arpasing音源に適応させましょう。

2※語尾の場合、ノートの後に休符がないと正しく動作しません。

 ②自動で使う場合

まず、Arpasing toolkit中のArpasing Assistantをプラグインフォルダに入れます。

取り敢えず、ノートに英単語を書きます。

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ノートにArpasing Assistantを適応すると自動でArpasing形式に変換してくれます。

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1※Arpasing0.1と0.2では収録音素が違うため、0.2形式UST→0.1USTへの互換性は多分ありません。

2※多音階Arpasing音源ではArpasing Assistantは使用できませんので、一時的に他の音階を隔離して単音階音源するか、単音階Arpasing音源に適応させましょう。

3※語尾の場合、ノートの後に休符がないと正しく動作しません。

4※1つの単語が複数のノートにまたがるときも、ノート1つで変換してあとから微調整してください。(ボカロのように伸ばし棒入れても分割されません)

5※語尾息音素は手動で「ay -」のように追加する必要があります。

6※アポストロフィは省いてください。(Brother's→Brothers)

 ③手動で使う場合(非推奨)

Arpasing Assitantを起動し、歌わせたい歌詞を入力するとArpabet音素が出てくるので、ノートを分割させ、この場合は[- ae][ae p][p ah][ah l][l -]と打ち込めば歌ってくれます。

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 ただし、Arpasing Assistantは「最適な異音を自動で選択してくれる仕組みがある」のでこちらの方法はあまり推奨しません。

 

・重複エイリアスの削除

Moresamplerの自動原音設定は基本的にあるものを全部切り出すので、語尾息「a -」、「a ん」などが大量に生成され、実際使うとなると読み込みに時間が掛かって使うのがやや面倒です。削除するにはSetParamやエクセルフィルタで削除するか、このソフトを使うといいです。

github.com

赤い丸の部分を押せばダウンロードできます。

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・使い方

1) moresamplerで生成したiniファイルを「number-duplicate-aliases-master」に入れる

2)「Number Duplicate Aliases.jar」を起動し、WindowsMacかを選択する。

3) 残したいエイリアス数を入力してOKボタンを押す。

4)「edited-oto.ini」を元のフォルダに戻し、「oto.ini」にリネームする。

 

・VCCV用UST→Arpasing用USTへの変換

 変換プラグインが作られておりますが完璧というわけではなく、いくつかの手調整が必要になるようです。(1つのノートに2つ以上の発音記号が入力されているなど)

 

・その他のArpasing用録音リスト

これ以外にも他の方が考えたArpasing用リストが存在するので興味があるなら収録してみるのもいいかもしれません。

基本的には上記と同じ方法です。

https://arpasing.neocities.org/jp/directories/reclists.html

 

Huaさんのリストがベースになっている場合、csvファイルにナンバリング+Arpabet表記を書き加えれば自動原音設定の項目に含まれます。(後述)

 

・Cz式VCCVの原音設定

①Cz式VCCVを普通に収録する

②以下のリンク先のcsvファイルを「index.csv」にリネームして音源フォルダに入れる。

vccv-index.csv - VocalSynth.Cloud

③moresamplerのArpasingで原音設定する。ただし、今回は「Rename entries with duplicated name?」に必ず「n」と入力すること。

④先ほどのソフトで重複エイリアスを消去する。上限の目安は10~20

 

・その他の英語リスト原音設定+リストの作り方

Arpasing式原音設定はCSVファイル内のArphabet表記を参考にして原音設定をするから、既存の英語リストもナンバリング+Arpabetでの表記を書き加えればmoresamplerが自動で原音設定してくれるようになります。

A行:wavの参照名

B行:Arpasingでの表記

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なので、既存のデルタ式CVVCリストなどをindex.csvに組み込めばmoresamplerでも自動原音設定してくれます。

 

これを応用すると独自のArpasingリストを作成することもできます。

ダイフォン表記:語頭,語尾は半角ダッシュ[-]、発音記号の間は半角スペース開ける。

例: [- ah], [d ae], [l -]

連続表記:発音記号の間はアンダーバー[ _ ]で埋める、語尾や語頭にアンダーバーは付けない。